気まづい車内 〜チェンマイに到着Part2〜
前回の記事にも書いたが
車内は依然として、しっかりと気まずい状態である。
運転席・助手席と後ろの客席にはしっかり仕切りがあるので
二人だけの空間である。
さすがにこの雰囲気に耐えられなくなり
『私はレイです。日本から来ました』と自己紹介をすると
『リーは日本から来たんだ。珍しいね』と言ってきた。レイだけど。
『珍しいの?』
『最近は中国人ばっかりだよ。日本のどこから来たの?』
『東京だよ』
『ああ!富士山があるところだね』としっかりとミスをしてくれたが訂正するのが
めんどくさかったので『そうだよ!』と笑顔を振りまいた。
『名前は?』と私は尋ねた。
『バードって呼んでくれ』
『本名?』
『いや、本名は言ってもわからないよ。長いし』
『教えてよ』
『$%&#&%&%$%$&』
本当にわからなかった。途中からもう聞いてもいなかった。
『バードって呼ぶよ』
『みんなそう言うよ』
ちょっとした自己紹介のおかげで雰囲気も明るくなった。
他のお客さんを全員下ろした後、私の宿に向かうので長い間
バードとはコミュニケーションをした。
チェンマイのオススメスポットや、美味しい料理なども教えてもらった。
いるかいらんかで揉めている時は本当に歩いて宿まで行ってやろうなんて
考えていたがバードの車に乗ってよかった。
『日本で知っているものある?』
『ナルト!ナルトは面白いよな』
さすがアニメ・漫画である。世界中で人気のようだ。
『螺旋丸』と私が叫ぶとバカウケした。
調子に乗って『お色気の術!』とモーション付きで叫んだが
『・・・オー!ははは』とピンとこなかったようでかなりスベった。
海外でスベると相手に若干気を遣わせてしまうので日本の2倍は落ち込むことを学んだ。
『アンパンマンは10番目くらいだな』と露骨に低評価を下していた。
知っているアニメを一つ一つ言っていたバードが急に笑い出した。
しかも結構ツボに入っている。
『どうしたんだ?』
『いや、あのアニメは面白い』
『なんてアニメ?』
『しんちゃん。あれは最高だ』とまた笑い出した。
『しんちゃんはお尻を出して踊るんだぜ』と言っている。
どいつもこいつも、男ってのは下ネタが大好きなようだ。
少し悲しくなったがこれで世界を旅することができるという
確信を得た瞬間でもあった。
宿に着き、車を降りるとバードは笑顔で手を振ってくれた。
最初はあんなにも嫌そうだったのにギャプでめちゃくちゃ良い奴に見える。
罪な男である。