エレガントな男が460円の宿に泊まる
昨日、タイに到着してバックパッカーの聖地カオサン通りに向かった。
カオサン通りはタイ人よりも白人の方が多いんじゃないかってくらいに外国人で溢れている。
泊まる宿(460円)に到着して、中を確認するとなかなかに渋い。正直にいうと汚いし狭い。ただ今後、世界を股にかける男としてそんなことでは驚かない。
寝床に到着すると、これまた狭い部屋に二段ベッドを押し込んだ空間が見える。
内心、ビビりつつも意外とプライドの高い私はルームメイトに「こいつ部屋見たくらいでビビってやがる。旅人初心者だな」なんて思われたくない訳である。
そのため『結構キレイな寝床じゃん、まぁ俺なんて本気出せばストリートでも寝れるけどね』という雰囲気の顔を作り余裕をかましながらベッドにカバンを置いた。(誰も私に注目していなかった)
シャワーを浴びるために部屋から出て階段を降りようとすると
大雨の影響からか雨漏りでホステルの階段が水浸しになっていた。
日本にいたら宿のボロさに発狂していただろうが今や私は旅人。どんな環境でも生きていけるぜと階段を下る。
転けた。もう全力で転けた。あまりの痛みに『緊急帰国』の四文字がよぎった。
『緊急帰国』なんて良い響きだ。雨漏りもしていなくて、階段も濡れてなくて、キレイなトイレだって日本にはある。そんな悪魔の囁きをかき消し、旅人は腰の痛みと足の中指の激痛に喘ぎながら立ち上がった。もう本当に泣きそうだった。
就寝しようとベッドに横たわるもなかなかの刺激臭が私を襲う。
繊細でエレガントな自分はこの環境で寝れるだろうかと心配した。
そうだこんな時こそ、これからのワクワクするような世界について妄想を広げてようと思い立ち数分後、
『明日はどんな世界が私を驚かせてくれるんだろう!』なんて思いを馳せることなく爆睡を決め込んでいた。