風になりたい
パーイそこはまさに楽園であった。
豊かな自然、きれいな空気、はじける太陽。
いるだけで笑顔になってしまうような環境である。
都会の波で揉みくちゃになった現代人の休息場としては
天国ではなかろうか。
パーイには移動手段があまりないらしい。
観光スポットも歩きで攻略するのは難しい。
歩きを公言していた私だがバイクを借りことにした。
バイクを初めて運転したのだがめちゃくちゃ気持ちいい。
交通もあまりないのスピードを出して走れる。
時速80キロを超えたあたりで風になったのを感じる。
なんとも言えない心地の良い気分になった。
なるほど、こうやって多くのライダー達は風になっていくのかとしみじみ思った。
せっかくパーイまで来たのにも関わらず、バイクにハマってしまい
ひたすら運転していた。
気がつくとミャンマーの近くまで運転していた。
ノンストップで観光地にも行かず、ひたすら走り続けていた自分に
びっくりした。
このままだと何も生産性のない1日になってしまう。
急いで天然の温泉があるというSai Ngam Hot Springに向かった。
温泉に着くまでの山道がかなり危なく、バイク初心者の私は何度も死にそうになった。
ぬかるんで曲がりくねった道。
道が狭く対向車との正面衝突が何度もよぎったほどである。
バイクに乗り慣れていない人は危ないかもしれない。
やっとの思いで温泉にたどり着いた私だが
ここで水着もタオルも何も持って来ていないことに気がついた。
日本の温泉とは違い水着着用が義務付けられている。
ここまで来たのだからと思い、パンツで入浴することにした。
お湯は緩くいつまでも入れるくらいである。
もう一生ここに浸かってよう思った矢先、隣にいた家族連れの団体から
大きな笑い声が聞こえる。
なんだろうと見てみるとお父さんが小さな男の子を持ち上げ回している。
微笑ましい光景だなと眺めていた。
しかし、よく見てみると男の子がオシッコをしているではないか。
くるくる回すことでオシッコが綺麗な円を描き、温泉に落ちていく。
いわば、ローリングオシッコである。
なんてことない話である。
みんなだって、海でオシッコくらいしたことはあるだろう。
しかも子供である。
私はすぐに温泉から上がった。