男二人でロマンチックな夜へ
ホイアンの夜がこれから始まる。
ネットで美味しいと噂の店で腹ごしらえをしてからランタンが輝く川辺に向かうことにした。
人気のお店のようで相席である。
人気なだけあって、リーズナブルな値段かつ最高に美味しかった。
目の前で美味しそうにご飯を食べているアジア系の男性がいる。
せっかく相席になったので話しかけてみることにした。
『こんにちは。美味しいですね』
『本当に美味しいですね』と当たり障りのない会話をする。
名前はキムさん。韓国人の29歳らしい。
一人旅でホイアンに来たらしい。
『名前はなんて言うの?』とキムさん。
『名前はレイだよ』
『日本ではよくある名前なの?』
『女の子にはいるけど男には珍しいかも』と答えると
『そうだよね。AV女優にいそうな名前だもんね』とキムさんがぶっこんできた。
『そ、そうだね』と私は苦笑いを浮かべる。
日本の性産業が世界に広がっているのは誇るべきことだが
自分の名前がAV女優みたいと言われるのは新しい切り口だったので
驚いてしまった。
その後も主にワンピースの話で結構盛り上がった。
キムさんの話によると片栗粉みたいな名前の人とルフィーが
今戦っているらしい。
アラバスタ編の途中で読むのをヤメてしまった私はキムさんの
トークに相槌を打つことしか出来なかった。
ルフィーはクロコダイルに勝つことが出来たのであろうか。
意気投合した私たちはどうせなら二人で川辺を散歩しようぜと
二人でロマンチックな川辺に行くことにした。
ライトアップされた川辺を見て私たちは息を飲んだ。
闇夜に光り輝くランタンが乾ききった心に潤いを与えてくれる。
隣にいるのがキムさんじゃなけれなば誰でも口説いていたかもしれない。
なんなら、もうキムさんでもいいから抱きしめたい気分に襲われる。
『男二人で来るような場所じゃないかもしれないけど、すごい綺麗だね』
彼女がいない二人は深く頷き合い、恋人が出来たら再度この街を訪れようと
熱い約束を交わした。
ロマンチックな川辺を後にし、お酒を飲みながら
今後の夢なんかの話をした。
キムさんは釜山でゲストハウスをするそうで
そのことについても色々と語ってくれた。
連絡先を交換して、
『韓国に行くときは必ず行く』 と別れを告げる。
別れ際はいつも少し寂しい。
でも大丈夫、また会える気がする。
だって同じ地球で同じ時間を過ごしているんだから。