結局焼肉がいちばんでしょ
貧乏旅行をしていると食事もシビアになってくる。
とりわけ私は食事に対してストイックに戦ってきた。
しかしこの日は違った。
旅先で出会ったタケシ、テツヤの2人と熱い協議もあり、
「今宵だけは豪勢に行こうぜ」ということになった。
何が食べたいか?
私は焼肉が食べたい。
もうべらぼうに焼肉が食べたい。
無心になって焼肉が食べたい。
私の熱いプレゼンテーションに胸を打たれたのか
2人も「焼肉に行こう」と言ってくれた。
普段、私はそこまで食に対するモチベーションが
高いわけではない。
しかし、道端の露店や激安レストランでしか
食事を取っていない私はかつてないほどに
食事への欲求が高まっていた。
ネットで調べた焼肉屋に入るとその匂いにまずやられた。
よく「香りだけで白飯3杯は食べれる」なんて言うが
リアルガチにイケる気がした。
まずお通しが届いた。
サラダである。
旅に出てから野菜をほとんど食べていなかった私にとって
このサラダは満漢全席クラスの食事である。
久しぶりの野菜に私は身を震わせた。
我々三人は皆んなひもじい食事しかしていなかったため
肉が運び出された時は喜びに絶叫した。
周りのお客さんはさぞ驚いたことだろう。
いい歳した男三人が焼肉を目の前に体をうねらせていることに。
空腹は最高の調味料という言葉がある。
まさにその通りだ。
涙が出そうなほど美味しかった。
というかもう泣いていた。
肉が焼かれる音が聞こえる。
モーツアルトの旋律を生で聞けたなら
こんな美しい音色なんだろうなぁなんて思ったりしていた。
ここで断っておくがこの焼肉屋さん別に高い店でもなんでもない。
なんなら安い店を探したぐらいである。
それでも心に残る美味しさだった。
食事は値段や食材ではなく
誰とどの風に吹かれて食べるのかが重要なのかもしれない。